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『インハウスで活躍する』 第9回 森田 薫君(日本ユニシス株式会社)

2014.10.20


 企業や官庁等の法務部門で働く法科大学院修了生が増えており、組織内法務、いわゆるインハウスは、第4の法曹として注目を集めています。その一方で、組織内の仕事であるだけに、 インハウスがどんな仕事か分かりにくいのも事実です。在学生や修了生の皆さんも、将来の進路として興味はあるけど、よく分からない、と思っている方が多いのではないでしょうか。
 
そこで、インハウスとして活躍する先輩達に、皆さんにとって関心の高い質問事項をお送りして答えてもらいました。 インハウスの実際がよく分かると思います。今後、このwebサイトで、 先輩たちの活躍の様子を定期的にご紹介していきたいと思います。


  第9回は、日本ユニシス株式会社法務部で活躍されている、森田薫さん(2008年度修了)にお願いしました。森田さんからは、チームとして働くやりがいについて興味深いお話が伺えました。是非参考にして下さい。



■ 本塾法科大学院修了後、今の会社へ就職されるまでを簡単に教えて下さい。


   2009年にロースクールを修了し、新司法試験を受験、東京での1年間の修習を経て、2011年1月に日本ユニシス株式会社に入社しました。


■ 現在の業務の概要を教えて下さい。 


   弊社法務部は、大きく、コーポレート法務を担当する企画法務、ビジネスを支援する事業法務、コンプライアンス関連、知的財産関連の4つの業務を行っています。
 私は事業法務室という組織に所属し、会社ビジネスを法務面で支援する業務を行っています。具体的な仕事内容としては、 まずは、契約書の作成支援業務があります。契約書の作成支援といっても、契約書の文言を読んだり作ったりしている時間はそれほど多くはありません。 契約書は、ビジネスの条件を紙に落としたものであり、重要なことは、契約書という書面を作ることではなく、 どのように条件を取り決めるかですので、現場の人からビジネスの背景について話を聞いたり、 具体的な取り決めの相談にのったりしている時間が多くをしめています。また、契約書の作成支援業務以外にも、 現場に法的な知識、考え方を定着させ、契約に関することも現場で判断できることは現場でスピード感をもって判断してもらうことを目的として、 法務研修にも力をいれています。さらに、会社の決裁基準策定支援等、会社のしくみづくりにもかかわりますし、 事業に関連する法令の整理やグループ会社の支援等幅広い業務を行っています。
 なお、弊社には、私以外にも、弁護士資格をもっているメンバーが1名、司法試験に合格していますが司法修習未了のメンバーが1名おります。
 


弁護士登録はされていますか?


 弁護士登録はしています。登録の有無が業務に直接関わることはありませんが、弁護士登録することで弁護士会とのつながりができ、 こうしたネットワークを通じて業務に関連する最新情報を把握することができるなど、間接的に業務に役立っているように思います。


■ どんなところに仕事の面白さを感じますか?

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 ビジネスに近いところで、意思決定の過程に、継続的に関与できることが魅力の1つだと思います。法律を知るだけではなく、 ビジネスや現場を知り、また経営のめざすところを知った上で、会社としての意思決定に主体的に関与ができるというおもしろさがあります。 また、法的な問題がでてきた際に局部的にかかわる、ということではなく、ビジネスの立ち上げ段階からかかわり、軌道に乗ってからも、 さらに、トラブルがあれば現場と一緒に対処する、というようにビジネスに継続的にかかわれることが魅力です。 私は、前職でIT系の会社でコンサルタント職をしており、様々なお客様企業で依頼された業務を遂行する、という仕事をしていましたが、 その際、たくさんのお客様とかかわれる楽しさがある反面、自分たちの支援の先、お客様企業がどんな意思決定をして、 どんな方向へすすんでいったのかまではかかわることができないさびしさがありました。法律事務所に勤める弁護士も、多くのお客様とかかわり、 高い専門性をもってアドバイスできるという魅力がある反面、会社の最終的な意思決定や継続的な事業にまで関与することができないという 側面もあるように思います。法務部での仕事、法律事務所での仕事、それぞれ役割や魅力が異なり、 どちらがよい悪いというものではありませんので、学生の皆さんには、ご自身がどういう形で社会に貢献したいのかよく考えて、 それぞれの選択をいただくのがよいと思います。
 また、会社の中で働くということには、チーム、組織で働くおもしろさもあるのではと思います。 会社という組織を動かすために、事業部門や法務、経理、人事といったそれぞれの組織の役割があり、 それぞれの持ち場で力を発揮して大きな組織が動いています。また法務部という組織の中でも、多くの人がいてそれぞれの力をあわせて、 会社の中で法務機能を提供しています。法律事務所で働く弁護士であれば、自分自身の専門性がいかに確立されるかが主たる関心事のように 思いますが、組織で働くと言うことは、自分がどうなりたいかというだけではなく、会社として、法務部として、チームとして目指す方向にむかっていく、 というおもしろさがあると思います。組織には色んな立場や考え方の人がいて、また、理屈だけではない世界もあり、 思うようにはいかないことも多いですが、そういういうことも含めて組織の中で働くおもしろさだろうと思いますし、  また、それをおもしろいと思える人が企業内弁護士にむいているように思います。


■ 逆に、お仕事で苦労されているのはどんな点ですか?


 質問の趣旨とずれてしまうかもしれませんが、継続的な課題、ということでお話させてください。
 法律事務所の弁護士と違って、法務部は待っていれば仕事がくる、黙っていれば情報は入ってくるので、それをさばけばよいだけ、 という受け身な印象をもたれている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そうではありません。 情報を提供しても何の利益も与えてくれない人に情報が入ってくるものではなく、また、法務部としてどんなによい支援体制をもっていたとしても、 現場から情報がはいってこなければリスクを把握することもできず、適切な支援ができません。 その結果、会社として間違った方向にすすんでしまう、という事態も考えられますので、法務支援が必要な案件につき、 適切なタイミングで相談してもらえる実態を維持することは、重要な課題です。
 特に、弊社では、真に法務支援が必要な案件に限られた法務リソースを注力することを目的として、現時点では社内ルール上、 一定の案件を除き、法務部にて契約書を照査することは必須とはしていません。そのため、 法的アドバイスが必要な案件につき適切なタイミングで自発的に法務部に相談してもらえることが、 実質的なガバナンスをきかせる上で大切になります。法務部に相談してもうるさいことを言われるだけで、 有益なアドバイスはもらえなかったということになれば、社内ルール上決められたプロセスの中で形式的に相談がくるだけになってしまいます。 そうならないために、日々の仕事の中で、現場や経営の目指すところを理解した上で適切なアドバイスを提供して、 法務部に相談してよかったと思ってもらうことを心がけています。相談を受けた場合に、何でもリスクだと言うだけであれば簡単ですが、 そうではなく、多くのリスクの中で、ビジネスの実態をふまえて、具体的な目の前の事案における、真のリスクとそうでもないものとを、 事業部門と一緒に切り分けながら考えることを通して、事業部門に、法務部がリスクだと言うからリスクなのだろうではなく、 主体的にリスクを認識してもらうよう働きかけること、その上で、リスクの低減策や、それでも残るリスクがあるのであればそれがとれるリスクなのか、 を一緒に考える姿勢が法務部として求められているように思います。
 なお、これは私自身の課題であるとともに、法務部全体で取り組んでいる課題です。私一人の取り組みであれば個人の問題で終わってしまいますが、チームで取り組むことで、誰に相談しても法務部に相談すると有益なアドバイスがもらえる、という意識が社内に定着し、法的アドバイスが必要な案件につき適切なタイミングで法務部に相談することが企業の風土として根付いていくものであり、目指すところと思います。


■ 本塾法科大学院で学んだことを、仕事の中でどのように活かしていますか? また、法科大学院教育には何を望みますか?


 民法・商法などの基礎的な知識を体系的に学んだことは、日々のすべての業務で役立っています。
 また、知識以外でも、法科大学院で学んだ法的な考え方は、仕事をすすめる上で役に立っていると思います。 例えば、事実認定の問題と、評価をして判断する問題をわけて考えることや、判断する際には、 どういう基準で(誰が)判断するのかを考える必要があること、さらには、何か物事を判断するときに、内容の正しさを担保するために、 手続きの正しさを担保しようという考え方など、こうした考え方は、法務部としての仕事にももちろん役立っていますが、 どんな仕事をするにあたっても役に立つものと思います。
 法科大学院教育に望むこととしては、企業内弁護士が講師をつとめる授業がもっと増えるとよいのではないかなと思います。 企業内弁護士から直接話を聞く機会ができることは、企業内弁護士を志す人が将来を具体的にイメージする一助となることはもちろん、 企業内弁護士に興味がなかった人が興味をもつきっかけにもなるのではと思います。


■ 5年後や10年後のご自身の将来像をお聞かせ下さい。


 私は、入社以来事業法務室というところにおり、法務部全体の業務を経験しているわけではないので、今後他の業務も経験した上で、 より幅広い視点で法務業務や会社ビジネスをみられるようになれたらいいと思っています。



■ 最後に、インハウスを志す後輩たちへのメッセージをお願いします。


 一括りに法務部や企業内弁護士といっても、会社によって、役割や業務も違うと思いますので、より多くの人の話を聞くことをおすすめします。 学生の皆さんが、よりよい選択ができますよう願っています。


ありがとうございました。さらなるご活躍、期待しています。

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