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『グローバルに活躍する』第4回 松本久美君(JBL MEKONG CO., LTD.)

2015.07.07


 社会がますますグローバル化する中、法曹の活躍の舞台も世界に広がっています。在学生の皆さんの中にも、そういった分野に興味を持っている人が少なくないものと思います。

 そこで、塾法科大学院を修了し、グローバルな領域で活躍している先輩たちにお願いし、どのようにして現職に至ったか、仕事のやりがいや難しさ、語学についてなど、皆さんの関心が高いと思われる質問事項をお送りして答えてもらいました。今後、このwebサイトで、先輩たちの活躍の様子を定期的にご紹介していきたいと思いますので、将来の進路の参考にして下さい。



 第4回は、JBL MEKONG CO., LTD.で活躍されている、松本久美さん(2008年3月修了)にお願いしました。松本さんは、現在タイで活躍されています。成長著しいアジアの最前線から、皆さんへのメッセージを頂きました。

■ 塾法科大学院修了後、現職に至るまでを簡単に教えて下さい。また、今のお仕事を選ばれた動機やきっかけもお聞かせ下さい。


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  法科大学院終了後は、横浜での司法修習を経て、東京の法律事務所で勤務弁護士をしていました。この事務所の取扱案件は幅広く、私自身も、相続、離婚、交通事故といった一般民事、家事案件から、労務案件、破産、管財案件、株主総会対策や契約書のチェック等の一般企業法務、M&A案件等に従事していました。また、2012年からは塾法科大学院にて修了生支援ゼミ(商法、会社法)を担当させていただきました。
 2014年夏に、現在の所属先であり、当時、カンボジア、ラオス現地にて日系企業向けのリーガルサービスを提供していたJBL MEKONGグル―プに参画しました。私の役割は、いわゆるタイプラスワンの需要を見据えて同グループのタイ法人を立ち上げることでしたので、参画と同時にタイのバンコク市に移住し、また、現地の法律事務所に出向を開始し、タイの法律及び法律実務を学びながら法人立ち上げの準備を行いました。2015年6月、無事にJBL MEKONG (Thailand)Co., Ltd.を立ち上げ、現在は同社の経営を行っております。
  このような経歴をお話させていただくと、よく「なぜタイで仕事をしているのですか?」というご質問を頂戴します。色々と理由はあるのですが、思い返せば、塾法科大学院生時代から中国法の講義を履修するなど、海外、特にアジアの法律に興味を持っていて、友人にも、将来はアジア関連の国際法務に携わりたいと語っていた記憶があります。こういう気持ちを持ち続けていた中で、2014年の夏にチャンスが巡ってきたので飛び乗った、というところがシンプルですが、海外移転の強い動機となったと思っています。



■ 現在の業務の概要を教えて下さい。 


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 タイ人弁護士スタッフと協力しながら、タイの日系企業向けのリーガルサービスを提供させていただいております。取扱案件は、日本からタイへ進出される際の外資等規制の調査、設立手続きのリーガルフォロー、労務、不動産売買、各種契約書のチェック等が主です。

 また、タイ法人にてラオス案件も扱っており、ラオス現地法人と日系タイ法人との合弁契約書の作成、現地における担保権の設定手続きといった案件以外に、ラオス政府との官民合同協議会への参加、ラオス労働法の翻訳といったことも行っています。


■ 弁護士登録はされていますか? 登録の有無はお仕事にどのように関係していますか?
 

  弁護士登録はしています。弁護士であるとお伝えできることで、少なからずお客様に安心していただけるように感じています。


■ どんなところに仕事の面白さを感じますか?
 

 タイは法律実務的にはかなり成熟しており、日本にいた時と変わらぬ面白さがあります。ただ、大きく異なるのは、タイと日本の文化の差異が法律実務にも少なからず影響してくる点です。両国の法律の差異だけでなく、文化的な違いからくる擦れ違いを調整しつつ、仕事を進めていくという作業は、クロスボーダー案件ならではの難しさと面白さがあります。

 ラオスは、法律実務面から見ると発展途上にあることもあり、商工会議所からのご依頼で法律の翻訳作業をさせていただいたりもしておりますし、日系第1号となる案件を扱わせていただくことも多いです。お客様と一緒に新たな法律実務を開拓していくことも、同国で仕事をする一つの醍醐味です。


■ 逆に、お仕事で苦労されているのはどんな点ですか?

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 言葉と文化の違い、これに尽きます。タイはタイ語、ラオスはラオ語が公用語であり、現地法の文献等もこれらの言語でのみ提供されていることが多いため、法律や実務を理解するためには現地弁護士の協力が必要となることが多いです。また、日系企業と現地企業、現地従業員との間では、文化的な違いから紛争が生じることが多く、事件解決のために、タイやラオスの文化を説明させていただくのですが、ご理解いただくまでに苦労することもあります。


■ これまで、海外ではどれくらいの期間お仕事をされましたか? また、海外ならではの苦労や工夫などお聞かせください。


 タイに来てから10か月程度です。

 タイは、英語が堪能な方は少ない上に、私は、当初から、タイ現地の法律事務所に出向し、かつ、住まいもいわゆる日本人街ではなく、純然たるタイのローカルの地域にありましたので、来タイ当初は、言葉が通じず、移動や日常の買い物にすら大変苦労しました。

 ただ、同僚を含めタイの方はとても親切で面倒見が良い方が多く、突如現れた外国人である私にも優しく接してくれ、喜んでタイ語も教えてくれましたので、日々体当たりで生活しているうちに必要最低限のタイ語は身に着きました。また、この生活の中で、タイの方の性格や物の考え方等文化的な面も自然に学ぶことができたと思っています。ですので、工夫というほどのものではないですが、色々考えるのではなく、とにかく現地の生活に飛び込んでみると案外なんとかなるのではないかというのが実感です。


■ お仕事で最もよく使われる外国語は何ですか? どこで、どのようにして身につけられましたか?


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 日本語、英語です。日系企業のお客様が多いので、お打合せ等は日本語でさせていただくことがほとんどです。他方で、契約書は英語で作成することが多く、また、タイ人弁護士とのコミュニケーションは英語で行っています。英語は、貿易外語科の高校在学中に、世界中から来たバラエティ豊かな外国人教師陣に叩き込まれた知識の貯金と来タイ前に慶應義塾大学の外国語学校に通って勉強をした程度です。


■ 塾法科大学院で学んだことを、仕事の中でどのように活かしていますか?


 すべての講義が今の仕事に活きていると思います。塾法科大学院における日々の講義で学んだリーガルリサーチ能力、法律情報処理能力は、日本で弁護士をしていたころから役立っていましたが、海外という、より高いリサーチ能力を問われている現状を踏まえると、非常に有効だと感じています。

 また、中国法の講義では、中国法を中国語で判読する機会があったのですが、ここで海外の法律への取り掛かり方を学べたことも、今の仕事にそのまま活きていると思っています。

■ 塾法科大学院では、英語のみで学位取得が可能な日本版LL.M.(法務修士)の開設を計画中です。アジアを視野に入れたビジネス法務を英語で学ぶことを基本とし、日本法に関心のある留学生や、グローバルな領域で活躍することを目指す日本人法曹を主たる対象としています。1年間のコースで、そのうち半年をアメリカやアジアの提携ロースクールに留学することも想定しています。日本版LL.M.の授業内容や方向性などについて、期待するところ、要望などお聞かせくださいませんか。


 とても意欲的な試みで非常に楽しみにしております。上述のとおり、クロスボーダーの案件では文化の違いによる問題に多々直面します。日本版LL.M.コースが法律の交流を超えて、文化交流の場になるとより良いのではないかと思います。


■ 5年後または10年後のご自身の将来像をお聞かせ下さい。


 アセアンにおいてワンストップリーガルサービスを提供できる組織を作ることが今の私たちの目標です。そのために越えなければならない課題は多いですが、現地弁護士に力を貸してもらいながら目指して行きたいと思っております。


■ 最後に、グローバルな領域で活躍することを目指す後輩たちへのメッセージをお願いします。


 「海外案件に従事したいなら、まずは日本の法務を学びなさい。」これは私が学生時代に、グローバルに活躍する先輩弁護士からいただいたアドバイスです。その先輩曰く、日本の有資格者としての日本法および法律実務はいわば基礎体力であり、これが身に着いていれば外国法を扱う海外法務という応用的な場面にも対応は可能だが、逆に、この基礎が欠けている状況で海外の法律を理解するのは困難である、とのことでした。海外で仕事をするようになって、まさにその通りだなと日々感じております。是非、今取り組んでいる日本法の勉強を大切にしてください。必ず役に立ちます。

ありがとうございました。さらなるご活躍、期待しています。

(記載内容は掲載日のものです。また個人としての記載であり、所属する組織・団体を代表するものではありません。)

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