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『インハウスで活躍する』 第1回 宮下晴代君 (株式会社サイバーエージェント経営本部法務室・2008年度修了)

2014.04.10


 企業や官庁等の法務部門で働く法科大学院修了生が増えており、組織内法務、いわゆるインハウスは、第4の法曹として注目を集めています。その一方で、組織内の仕事であるだけに、インハウスがどんな仕事か分かりにくいのも事実です。在学生や修了生の皆さんも、将来の進路として興味はあるけど、よく分からない、と思っている方が多いのではないでしょうか。
 そこで、インハウスとして活躍する先輩達に、皆さんにとって関心の高い質問事項をお送りして答えてもらいました。インハウスの実際がよく分かると思います。今後、このwebサイトで、先輩たちの活躍の様子を定期的にご紹介していきたいと思いますので、インハウスに関心のある、在学生・修了生の皆さん、是非ご期待下さい。


記念すべき第1回は、現在、株式会社サイバーエージェント経営本部法務室で活躍されている、宮下晴代さん(2008年修了)にお願いしました。

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■ 本塾法科大学院修了後、今の会社へ就職されるまでを簡単に教えて下さい。

 修了後、1年の浪人期間を経て司法試験に合格、静岡での修習期間の後、現在勤務しているサイバーエージェントの関連会社に入社いたしました。その後、サイバーエージェント本社に転籍となり、現在に至ります。

 

現在の業務の概要を教えて下さい。

 

 法務室に勤務しています。弁護士登録はしていませんので、正確には「社内弁護士」とは言えませんが(会社によって登録費用負担や、公益活動に対する認識は異なるものと思います)、現在のところ、弁護士登録をしていないことによる業務上の不便はありません。

 当社の法務室の業務内容は多岐にわたります。

 一般的な法務室の業務として契約審査業務、株主総会・取締役会の準備などのほか、グループ会社の設立から清算手続きまで法務室のメンバーが行います。特に会社の設立・清算については、社内で手続きを完結するため短期間で円滑に進められるという利点があります。

 さらに広告関連では、与信審査、掲載内容についての審査業務、ソーシャルゲーム関連では、景品表示法・著作権法・特許法・商標法の法律相談業務などがあります。

 訴訟対応は数少なく、発生した都度、法律事務所の先生とご相談させていただき対応することになります。通常業務の範囲には含まれません。

 むしろ、前もって訴訟が起きないようにするのが法務室の役割ですから、他社の技術・サービスを研究し、権利侵害が発生しないよう情報収集に努めています。また、現場社員へ法令順守の重要性を伝える啓蒙活動も重要な業務になります。特に、SNSサービス等、個人の情報発信が活発な今日では、会社の機密情報の管理上も啓蒙活動が重要とされています。こうした活動を通じて、法令が順守される環境を作っています。

 

どんなところに仕事の面白さを感じますか?

 

[事業スキームの構築から携わり、担当者と協力して仕事を進める]

 おもしろいと感じるのは、事業スキームを練る段階からプロジェクトに参加し、沢山の問題(必ずしも法律問題だけではありません)を解決していくときです。

 まず、事業立ち上げ初期の段階から、担当者と一緒にビジネススキームを考え、リスクを最小限にとどめるよう考え抜きます。なぜなら、多額の資金を投じて作った商品やサービスが後になって法令違反だと判明した、というのでは、商品・サービスの作り直しという点で経済的損失となり、さらに取引先との関係や会社自身の評価にも影響する点で、大きな損失となるためです。

 できるだけ多くのリスクヘッジをすることで、事業に貢献できると考えています。

 

[時には直接対面で契約交渉も]

 事業には他社と共同で行うものや、他社との協業関係で実現するビジネスが多くあります。その場合の契約交渉や、共同事業を行う上で確認・協力すべき事項などを予め明確にすることで担当者をアシストする、という役割も担っています。直接契約交渉を行うこともしばしばあります。

 

[事業スピード・法制度・経済状況に対応]

 事業内容によって市場の変化・スピードは違うと思いますが、インターネット業界に関しては10年前にはまったく存在していなかったサービスが主流となり市場を牽引しています。また、技術革新により取引内容が常に変化するため、エンジニアやクリエイターと技術の話ができなければなりません。

 さらに、産業・技術の革新に合わせて法整備がなされていきます。先日から話題のインターネット上の仮想通貨のように、一定のサービス・産業が発展し、法整備・法規制が後からなされる、ということも多くあります。そのため、自社の事業内容の変化だけでなく、法制度の整備状況や、現在の経済状況に合わせた適切なリスクヘッジを行うことが求められます。

 

[海外の法規制に配慮]

 海外の関連会社の有無にかかわらず、インターネットは世界に通じているため、海外の法規制についての判断が必要になります。

 悩ましいのは、準拠法の問題だけでなく、海外における法適用の基準・違反した場合の効果や経済的なインパクトがなかなか具体的に把握できない点です。

 未成年者に対する法規制一つとっても、海外ではサービス提供そのものが禁止されていたり、個人情報の取り扱いについては日本と異なる規制があったりするため、サービス提供に慎重にならざるを得ない側面もあります。

 商標も海外の商標を侵害しないか調査が必要になります。こうした課題に対応するため、海外展開を含め視野を広げ、情報収集・活用できることが大きなやりがいにつながっていると感じます。

 

逆に、お仕事で苦労されているのはどんな点ですか?

 

 法律事務所勤務で法律相談を受ける場合と異なり、実際に事業が適法・適正な運営となるよう人を動かす必要があります。相談を受けてそこで終わり、とはならないわけです。そこが法務室ならではの難しさであり、やりがいにつながっているのだと思います。

 法律関係では、伝統的な既存のサービスを前提に法律が策定されており、法律解釈・適用の有無が必ずしもはっきりしないことが多くあります。この点は関係各機関に相談しながら慎重に進める必要があるため、努力しています。

 

 

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本塾法科大学院で学んだことを、仕事の中でどのように活かしていますか? また、法科大学院教育には何を望みますか?

 

 慶應義塾法科大学院では、多くのワークショップや、海外の法律に関する授業など多彩な授業項目と尊敬する先生方がいらっしゃったおかげで、興味の範囲を法律の先にあるビジネスへと広げることができました。

 また、多くの文献・判例を読み込んで授業に出ることで文書・情報収集・分析能力を培うことができ、現在とても役立っています。

 

5年後や10年後のご自身の将来像をお聞かせ下さい。

 

 インターネットを通じたサービスはこれからも増え、多様化していくものと思います。その変化に柔軟に対応し、引き続き事業サイドのメンバーを支えていきたいと考えています。また、海外法規制についてもっと学び、さらにビジネスが円滑に進むよう役に立ちたいです。

 当社には、お子さんがいらっしゃる方も多く、ママがイキイキ働ける環境なので、家族をもちながら働くことができたらうれしいなとも思います。仕事もプライベートもどちらかひとつではなく両方充実させることにより、継続して成果を出し続けることができるのではと考えています。

 

最後に、インハウスを志す後輩たちへのメッセージをお願いします。

 

 ビジネスの中心で、事業や経済のダイナミズムを体感してほしいと思っています。

 企業で働く、ということの一番の面白みは、ビジネスの中心に身を置けるということだと思います。決して他人事ではなく、実際にビジネスに携わる者として経済・市場の変化に合わせて業務範囲を広げることもできます。私個人の力は微力ですが、日々の業務を通じ、インターネット、スマートフォン事業の目覚ましい成長をさらに推し進めるんだ、という意識を持って業務に就いております。自分が担当したプロジェクトが成功した時の感覚は格別のものです。

 企業内法務を目指す方には、ビジネスを動かす面白さをぜひ味わってみていただきたいと思います。

 在学中の法律の勉強は、すべての基礎になるので、慶應義塾の先生方のお導きに従い、懸命に努力すべきですが、さらにその先に進むため様々な事象・新聞記事などにアンテナを張り、どのような法規制があるか、その影響度合いはどうか、など考えを巡らせてみて下さい。

 

どうもありがとうございました。これからのさらなるご活躍、期待しています。

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