2011年5月9日(月)に開催した慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)の説明会の内容を一部ご紹介いたします。6月18日(土)にも2012年度の入試説明会を行いますので、興味をお持ちの方はご出席ください。
【説明会概要】
開催日時:2011年5月9日(月) 18時10分~19時40分
会場:南校舎ホール(南校舎5階)
【説明会次第】
1.はじめに
2.カリキュラムの概要
3.2012年度入試について
4.実務家紹介......中村晶子(慶應義塾大学法科大学院教授)
5.在学生紹介
6.質疑応答
実務家紹介......中村晶子(慶應義塾大学法科大学院教授)
2011年5月9日(月)に開催された慶應義塾大学法科大学院入試説明会のうち、教員として、また弁護士としてご活躍されている中村晶子先生の講演を抜粋してご紹介いたします。法曹を目指される皆様のご参考になれば幸いです。
弁護士をしながら、教員として民事系の科目を数科目担当しています。
当時は女性が就職しても結婚すれば辞めるのが当たり前の時代で、資格がなければ長く働け ない状況ということで私は弁護士を選びました。
司法修習の後、30代の若い弁護士が3人いる法律事務所の1人目のいそ弁(居候弁護士:雇 われ弁護士)としてとして就職しました。民事事件、会社関係事件、刑事事件、少年事件、行政 事件も担当でき、色々な経験が積めて運が良かったと思います。その後独立して、今は3人のパ ートナーと共同経営の事務所をやっています。
弁護士の仕事というと、裁判所に行って裁判に出ることをまず想像するかもしれませんが、私 (中村)の事務所ではそれほど裁判の比率は高くありません。主に民事事件、会社の事件や、た まに刑事事件・行政事件を担当しています。 法科大学院に来る前は、司法研修所で3年間教官 をしていました。法科大学院以外では、国・自治体の審査会・審議会の委員、ADR(裁判外紛争 処理機構)の斡旋委員の仕事、あるいは環境問題に興味があるので環境NGOの理事をしてい ます。
皆さんはご自分の興味に応じた仕事を選んでいけばいいと思います。今の学生に話を聞くと、 はじめから進路を決めなければいけないように思っている人が多いですが、決まっていないよう な人は、色々なことをやる中から、自分の興味にあうものを見つけていけばよいと思います。
(今日の説明会には)女性の方もたくさん参加していて、弁護士業と、結婚、出産を両立できるか と心配している人も多いかと思います。楽ではありませんが、必ず両立できます。
(現在の就職状況について)裁判官や検察官は枠が決まっていて増えないので、ほとんどの人 は弁護士になります。今までは、多くの人は最初法律事務所に就職して、いそ弁として働くこと が多かったのですが、リーマンショック以降、また先日の地震によって就職が厳しくなっているこ とは事実です。しかし、就職難を心配してこの道を選ばないというのもまた違うような気がしま す。この仕事は資格があれば法律事務を行えるところが良いところです。就職できればそれでい いですし、できなければ自分で仕事をつくってやっていけばいいのです。自分たちが新しい仕事 をつくっていくんだ、という強い気持ちをもってやってほしいと思います。
最後に、これから法曹になる人たちには、法律一辺倒にならないように広い分野の勉強をして もらいたいと思います。法律というのは社会科学、社会科学というのは経験の学問です。社会が どういうものかということを知らなければ良い法律家にはなれません。社会の現象のなかで色々 なことが起こってくる。それを法律家がときほぐして良い解決を見つける、ということですので、社 会がどうなっているのかを知ることが、良い法律家になる第一歩だと思います。
法科大学院での日々はプロになるための勉強ですから甘くはありません。慶應の合格率はい いですが、それは学生がよく勉強するからです。簡単ではありませんが、それを乗り越えてプロ の法律家になるという覚悟をもって、来年の4月にお目にかかることを楽しみにしています。
在学生紹介
2011年5月9日(月)に開催された慶應義塾大学法科大学院入試説明会の中から、法曹を目指して当法科大学院(以下では、慶應ロースクール)に在籍している学生の声をご紹介いたします。慶應ロースクールを目指している方のご参考になれば幸いです。
B:既修者コース3年 女性。
Q1:数あるロースクールの中で、慶應ロースクールを選んだ決め手は?
A:1点目は授業、2点目は友人。(1点目の授業について)ロースクール生活において授業の占める割合は高く、新司法試験にも役立つ授業を求めていた。(2点目の友人について)学校の授業では新司法試験対策のようなものは行われないので、友人と勉強していくことになる。気の合う、優秀な友人がいることが大切。慶應LSは合格率が高く、人数が多いので選んだ。
B:1点目は合格者数と合格率。友人との勉強会が多いと聞いたので、優秀な仲間と切磋琢磨したかった。法曹になってからもつながりのある仲間。2点目は熱意のある先生。オフィスアワーや、Eメールでの質問にも快く答えてくれる。実力のある実務家の先生に教えてもらえる点、エクスターンシップで法曹養成に熱心な事務所を訪問できる点も慶應ならではの魅力。
Q2:慶應ロースクールで授業を受けた感想は?
A:予習、復習の量が多くて嫌になることもあるが、それについていけば少しずつ力がついてくる。修了生のページ(※「2010年新司法試験の結果を踏まえて」
(http://www.ls.keio.ac.jp/graduates/2010message.pdf)にもあるが、学校の成績と新司法試験の結果は関係している。授業についていけば価値があると考えると、楽しく、充実した勉強ができる。
B:ソクラテスメソッドの授業はいつあたるかわからないのでドキドキするし、予習に手を抜けない。また、問われたことを即座に、人に伝わるように答えないといけないので、ロースクールの授業は大変だがやる気になれる。特に、慶應ロースクールの授業は、演習形式のオリジナル教材を扱う授業が多く、予習の段階で重要な判例や論点に必然的に触れられるようになっているので、ポイントを押さえた学習ができる。慶應は選択科目が充実しているが、特に医事法があり、実際の医事紛争について、原告、被告、裁判官の立場から演習形式で学べるため、そういう分野に興味がある方にはおすすめ。
Q3:1日のおおまかな生活スタイルは?(予習復習などの自習の時間等について)
A:だいたい朝9時から夜10時くらいまで勉強している。授業に出ていないときは自習室で予習・復習をしている。学校の成績と、新司法試験の結果が相関しているので、予習・復習で十分。予習の量は人それぞれで、自分の生活スタイルに合わせてやっている。
B:人それぞれだが、1つの科目について、2~3時間は予習してくる。授業は1日あたり1~3コマ。復習にも理想としては同じくらいかけたいが、土日にまとめて復習するようにしている。
Q4:最後に慶應ロースクールを受験する皆さんへのアドバイス
A:試験というのは自分の頭のなかでわかっていてもそれを表現できなければ点数には結びつかないので、アウトプットを意識したものを心がけた。また、問題を見た瞬間、論点が浮かぶようにしていた。受験の際、目標は高めに設定するとよい。合格を目標にするのではなく、上位合格を目指すとよいと思う。
B:アウトプットしてみると、意外とわかっていないことが多い。答案構成をたくさんし、時には実際に論文を書いてみる。答案構成をすると足りない知識がわかり、論文を書くとうまく表現できないことに気づく。まずは条文、次に判例を意識して勉強する。慶應の短答式試験(既修者コース入試)は他のロースクールよりも内容的には難しいので、早めに解いてみること。論文式は時間が短く、答案を最後まで書ききらないと合格からも遠ざかると思うので、早めに時間配分をつかんでおいたほうがいいと思う。