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『グローバルに活躍する』第8回 山口健次郎君(森濱田松本法律事務所(Frasers Law Company ホーチミンオフィス出向中))

2016.01.28


 社会がますますグローバル化する中、法曹の活躍の舞台も世界に広がっています。在学生の皆さんの中にも、そういった分野に興味を持っている人が少なくないものと思います。

 そこで、塾法科大学院を修了し、グローバルな領域で活躍している先輩たちにお願いし、どのようにして現職に至ったか、仕事のやりがいや難しさ、語学についてなど、皆さんの関心が高いと思われる質問事項をお送りして答えてもらいました。今後、このwebサイトで、先輩たちの活躍の様子を定期的にご紹介していきたいと思いますので、将来の進路の参考にして下さい。



 第8回は、森濱田松本法律事務所で活躍されている、山口健次郎さん(2007年3月修了)にお願いしました。

■ 塾法科大学院修了後、現職に至るまでを簡単に教えて下さい。また、今のお仕事を選ばれた動機やきっかけもお聞かせ下さい。


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 2007年司法試験合格後、司法修習を経て、2008年12月に弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所に入所しました。入所と同時に北京において1年間中国語と中国法の研修をし、東京オフィス勤務の後、2010年に現在所属している森濱田松本法律事務所に移籍しました。その後、2012年から2014年まで同事務所北京事務所の一般代表として中国での実務に従事しました。

 その後、2014年2月からベトナム現地大手事務所Frasers Law Companyのホーチミンオフィスに出向し、ベトナムにおける外国弁護士として、現在、ベトナムでの実務に従事しています。

 父親が商社で働いていたため、学生の頃から海外に短期で在住することが多く、海外生活や語学に関して抵抗がなかったため、弁護士として渉外業務に従事することを早い段階から決めていました。


     ベトナムの交通事情



■ 現在のお仕事の概要を教えて下さい。


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  クライアントの90%以上が日系企業です。これからベトナムに進出する企業や既にベトナムに進出した企業のために様々なリーガルサービスを提供しています。仕事は大きく分けて2つあり、①東京(東京に限らず、大阪、福岡、名古屋などからの投資案件も増えています)又はシンガポールからの投資案件と②ベトナム現地法人で生じた法律問題の解決です。前者①の主な仕事は、ベトナム企業を買収するようなM&A案件やベトナム企業などとの合弁会社の設立案件です。M&A案件などでは、法務DD(Due Diligence)、契約交渉、契約書の作成、ベトナム政府との交渉のサポートなどを行っています。後者②の主な仕事は、現地法人の知的財産権や労務の問題などに関するサポートを行っています。


     職場の同僚と



■ 弁護士登録はされていますか? 登録の有無はお仕事にどのように関係していますか?
 

 日本の弁護士として日本で登録しているほか、ベトナムにおいて外国弁護士登録をしています。前者は、ベトナム国内における業務の内容によっては登録が不可避というわけではありませんが(現にコンサルタントという形で一部類似のサービスを提供する会社もあります)、常に不安が付きまとう海外投資を行うにあたってやはり日系企業の日本の弁護士に対する信頼は厚いと思いますし、その信頼に十分に応える必要があると思っています。後者は、ベトナム国内において外国弁護士がリーガルサービスを提供する場合には必須のものとなっており、また、ベトナム国内における就業許可を代替する役割も果たしています。


■ どんなところに仕事の面白さを感じますか? 


 上記でも述べましたが、多くの日系企業の方がベトナム国内における投資に関して多くの期待と不安を抱いています。ベトナムでは、法律やその解釈は曖昧であり、判例も公表されておらず、行政機関の裁量も非常に大きいものとなっています。日本とは異なる困難な状況下において、クライアントとともにベトナム投資を成功させることにやりがいと面白さを感じています。


■ 逆に、お仕事で苦労されているのはどんな点ですか? 


 ベトナム案件に対応する場合、ベトナム弁護士の協力が不可避ですが、コミュニケーション、クオリティ、スピード感の3つでやや苦労しています。まずコミュニケーションですが、ベトナム語又は日本語でビジネスレベルのやり取りを行うのは現実的ではないので共通言語を英語に設定しています。ベトナム人も私も英語が母国語ではないので、常にお互いに誤解が生じないように確認しながら作業を進めています。次に、クオリティですが、ベトナム人弁護士の中にも極めて優秀な弁護士は多く存在しますが、やはり大きな国際案件に不慣れな弁護士もいるため、常にクライアントが求めている結果のレベル(どのような回答であれば満足するのか)を伝えながら作業を進めています。最後に、スピード感ですが、M&A案件ではスピード感が要求されます。国民性もあると思いますが、ベトナム人は、残業(徹夜はもっての外)を好まない傾向にあります。この場合、案件の重要性をうまく伝え、自らも徹底して仕事をすることによってベトナム人弁護士に理解を求めています。


■ 海外では何年ぐらいお仕事をされましたか? また、海外ならではの苦労や工夫などお聞かせください。


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 海外では、中国(北京)で3年、ベトナム(ホーチミン)で2年の計5年ほど仕事をしています。もともと海外生活は慣れていたので大きな苦労はありませんが、中国では反日運動(巻き込まれないようにいつもシンガポール人のふりをしていました)や大気汚染(PM2.5)、ベトナムでは交通事故(バイクの交通量が非常に多い)に気を付けています。結論から言えば、住めば都ということわざを痛感しています。


         職場の同僚と



■ お仕事で最もよく使われる外国語は何ですか? どこで、どのようにして身につけられましたか?


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 中国では、業務及び生活ともに中国語、ベトナムでは、業務では英語、生活ではベトナム語を使っています。中国語に関しては、前述のとおり、北京での語学留学及び実務経験によって習得しました。ベトナム語は、現在もベトナム語学校に通っていますが、ベトナム語自体がもともと漢字圏の言語であるため(中国語とかなり似ている)、生活レベルであれば(ビジネスレベルはまだまだ難しい)、なんとか早い段階で習得することができました。英語は、学生時代にオランダに短期留学したこともありますが、ビジネスレベルで通用する水準に至るまで

は現在の事務所に入所してから徹底的に実務を通じて鍛えられました(笑)。


        同僚の結婚式




■ 塾法科大学院で学んだことを、仕事の中でどのように活かしていますか?


 すべての授業が現在の業務に役立っています。高いレベルの教員及び生徒とともに学ぶことはかなり有意義であったと感じています。その中でも特に役立った授業を挙げるとすれば、近藤丸人先生の中国法講義です。外国法を外国語で読んで理解するという実務上極めて重要な基礎をここで学びました。非常に分かりやすい講義であったため、外国法を外国語で読んで理解するという作業に関して抵抗がなくなるどころか、むしろ楽しさを感じるまでに至りました。このことが現在の自分を支えていると思います。ベトナム法の場合、まずは英語訳を読みますが、翻訳の疑義を感じた場合には(必要に応じてベトナム人弁護士に確認しながら)ベトナム語を直接読んでいます。



■ 塾法科大学院では、英語のみで学位取得が可能な日本版LL.M.(法務修士)の開設を計画中です。アジアを視野に入れたビジネス法務を英語で学ぶことを基本とし、日本法に関心のある留学生や、グローバルな領域で活躍することを目指す日本人法曹を主たる対象としています。1年間のコースで、そのうち半年をアメリカやアジアの提携ロースクールに留学することも想定しています。日本版LL.M.の授業内容や方向性などについて、期待するところ、要望などお聞かせくださいませんか。


 アジア諸国の法律に比べ、日本法は洗練されていると感じることが多いと思います。実務においても、「日本法ではこのような問題点があるがベトナム法ではどうなっているの?」という形で多くの論点を抽出してあげて、ベトナム人弁護士とともにベトナム法の検討をすることが多々あります。アジア諸国の弁護士らや法曹を志す学生が日本の法律を学べば、アジアの弁護士の全体の水準の底上げにもつながると思います。また、グローバルな領域で活躍することを目指す日本人法曹にとっても、アジアの弁護士と触れ合う機会が増えることによってアジア諸国特有の法制度の理解を深めることになるため、(彼らがアジアの渉外案件に従事すれば)アジア投資を検討している多くの日本企業の利益にもつながるかと思います。


■ 5年後または10年後のご自身の将来像をお聞かせ下さい。


 塾法科大学院には大変お世話になったので、いつか塾法科大学院の学生たちに自分の経験や知見を伝えることによって恩返しをする機会を頂ければと思っています。




■ 最後に、グローバルな領域で活躍することを目指す後輩たちへのメッセージをお願いします。

 グローバルで活躍するには語学能力なども要求されますが、何よりも日本の法曹としての基礎が最重要ですので、高いレベルの教員及び生徒がいる塾法科大学院でしっかりと学ぶことが大切かと思います。頑張って下さい!。


ありがとうございました。さらなるご活躍、期待しています。

(記載内容は掲載日のものです。また個人としての記載であり、所属する組織・団体を代表するものではありません。)

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